悪夢への変貌──作家たちの見たアメリカ
	福岡和子・高野泰志 編著
	丹羽隆昭・中西佳世子・竹井智子・杉森雅美・山内玲・島貫香代子・吉田恭子・伊藤聡子 著
	2010年2月8日
	定価：2400円＋税
	四六判・ハードカバー・304ページ
	ISBN:978-4-87984-279-4
	【在庫僅少】

内容紹介

  豊かさと平等を標榜する「理想の国」アメリカ。しかしその現実は……そして、作家の想像力は、理想と現実に引き裂かれたアメリカをどう描いてきたのか。

「はじめに」より
  ……そもそも理念の国であるアメリカは、歴史は短いながら、初めに自ら掲げた理念からの逸脱に繰り返し警鐘を鳴らし、そこに立ち返ることを説いてきた。喪失した地位と威厳を取り戻そうとしている現在も、創生時に独立宣言のなかで高らかに掲げた理念（「人はすべて平等に造られている。人はすべて創造主によって誰にも譲ることのできない一定の権利を与えられており、その権利の中には、生命、自由、そして幸福の追求が含まれている」）が、果たしてこれまでアメリカ社会において実現されてきたのか、新たに問われなければならないはずである。アメリカ作家の想像力も、個人の問題を追及するにせよ、それぞれが生きた時代固有の問題を追及するにせよ、これまで常に「アメリカ」そのものをテーマとしてきたと言っても過言ではない。そしてその結果は、残念なことに、民主主義国家の発展を自負することからは程遠く、むしろアメリカの暗部、即ち理想の挫折・崩壊を彼ら独自の手法でもって執拗に描き続けることであった。言い換えるなら、作家たちが繰り返し描き出してきたものは、ユートピアではなく、むしろディストピアのアメリカであったと言ってもよい。

【主要目次】
はじめに
第一章  「家庭」なき「家」の「日常──『七破風の家』随想  （丹羽隆昭）
第二章  『大理石の牧神』の「幸運な堕落」をめぐる二重のプロット──十九世紀アメリカのデモクラシーとプロヴィデンス  （中西佳世子）
第三章  メルヴィルと貧困テーマ──声を上げる貧者たち  （福岡和子）
第四章  『大使たち』とジェイムズのアメリカ──ニューサム夫人「殺し」を読み直す  （竹井智子）
第五章  「新しいニグロ」と「白人なりすまし小説」──ハーレム・ルネッサンスの理想とパラドックス  （杉森雅美）
第六章  記憶のまなざし──「リンチの時代」のアメリカとフォークナーにおける暴力の表象  （山内玲）
第七章  禁酒法時代から読む「ドライ・セプテンバー」  （島貫香代子）
第八章  原罪から逃避するニック・アダムズ──「最後のすばらしい場所」と楽園の悪夢  （高野泰志）
第九章  作家の作家の声──二つの「音声計画」に見る創作科の声の政治学  （吉田恭子）
第十章  際限のない可能性──リチャード・パワーズと『ガラテイア2.2』  （伊藤聡子）
おわりに

編者・著者紹介

【編著者】
福岡和子
  京都大学大学院人間・環境学研究科教授。
  著書に『変貌するテキスト―メルヴィルの小説』（英宝社）、『「他者」で読むアメリカン・ルネサンス―メルヴィル・ホーソーン・ポウ・ストウ』（世界思想社）などがある。

高野泰志
  九州大学大学院人文科学研究院准教授。
  著書に『引き裂かれた身体―ゆらぎの中のヘミングウェイ文学』（松籟社）、『アーネスト・ヘミングウェイの文学』（共著、ミネルヴァ書房）などがある。

【著者】
丹羽隆昭
  関西外国語大学教授。
  著書に『恐怖の自画像―ホーソーンと「許されざる罪」』（英宝社）、『クルマが語る人間模様―二十世紀アメリカ古典小説再訪』（開文社出版）などがある。

中西佳世子
  甲子園大学総合教育研究機構助教。

竹井智子
  京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科准教授。
  著書に『テキストの地平―森晴秀教授古希記念論文集』（共著、英宝社）がある。

杉森雅美
  カンザス大学英語英文学部講師。

山内 玲
  大谷大学非常勤講師。

島貫香代子
  京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程。

吉田恭子
  慶應義塾大学文学部准教授。
  著書に『情の技法』（共著、慶應義塾大学出版会）、『J. M. クッツェーの世界―〈フィクション〉と〈共同体〉』（共著、英宝社）がある。

伊藤聡子
  立命館大学言語教育センター講師。
  著書に『身体、ジェンダー、エスニシティ―21世紀転換期アメリカ文学における主体―』（共著、英宝社）がある。

ご購入方法

全国の大型書店さん店頭で並べていただいています。

お近くの書店にないとき、お急ぎでご購入されたい場合は、小社のオンラインサイト松籟社stores.jpを御利用下さい。クレジットカード、コンビニ支払、銀行振込等、各種決済がご利用いただけます。

→松籟社stores.jp