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東欧の想像力1 |
砂時計 |
ダニロ・キシュ[著]/奥彩子[訳] |
2007年12月14日発行 |
定価:2000円+税 |
四六判・ハードカバー・312ページ |
ISBN:978-4-87984-248-0 C0397 |
※現在、品切れとなっております |
内容紹介
『砂時計』には、現実に書かれた一通の手紙が取り込まれている。その手紙の中に封印された、歴史的事実の重みを前にして、わたしたち読者は打ちひしがれるが、それと同時に、そのまわりに複雑な虚構の迷宮を築かずにはいられなかった、作者ダニロ・キシュの不屈の精神にも圧倒されるのだ。――若島正
旧ユーゴ・セルビア出身の作家ダニロ・キシュの代表作。
強制収容所で命を落としたユダヤ人の男の手になる一通の手紙。男の息子=作家ダニロ・キシュは、その手紙を内部に取り込んだ小説『砂時計』を書く。多様な文体と語りの構成によって、父の手紙の世界・時代が、小説の形式で再創造される。
著者・訳者紹介
ダニロ・キシュ Danilo Kis, (1935-1989)
1935年、旧ユーゴスラヴィアのセルビア北部の町スボティツァで、ハンガリー系ユダヤ人の父とモンテネグロ人の母のあいだに生まれる。両親の意志でセルビア正教の洗礼を受け、ユダヤ教徒=ユダヤ人とカテゴライズされるのを免れる。父親エドゥアルドは家族から切り離され、1944年にアウシュヴィッツに送られ、消息を絶っている。
「四歳のころ、ハンガリーで反ユダヤ法が公布されようとしていたとき、両親はノヴィサドの聖母被昇天教会で僕に正教の洗礼を受けさせた。それが僕の命を救った」『出生証明書(短い自伝)』(1983)
第二次大戦の終結後、母、姉とともに母の故郷のモンテネグロの古都ツェティニェに移住。ベオグラード大学文学部に進学し、修士課程を修了した後、フランス各地の大学でセルビア・クロアチア語の講師をつとめながら、小説の執筆を始めた。1962年の『屋根裏部屋』、『詩篇四四』でデビュー。その後、自伝的三部作(『砂時計』、『庭、灰』、『若き日の哀しみ』)で作家としての地位を確立すると、『ボリス・ダヴィドヴィチの墓』でニース市金の鷲賞、『死者の百科事典』でイヴォ・アンドリッチ賞を受賞、また1986年にはレジオン・ド・ヌール勲章シュヴァリエ章を受けるなど、国内外での高い評価を得る。
1989年10月15日、10年を暮らしたパリで肺癌のために死去。遺言により、遺骸はベオグラードに運ばれて、セルビア正教にのっとり、市内の新墓地に葬られた。
奥 彩子
1976年生まれ。1999年、京都大学文学部卒業。
ベオグラード大学留学を経て、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。
2012年現在、共立女子大学専任講師。
著書に『境界の作家 ダニロ・キシュ』(松籟社)がある。
訳書に、本書のほか、ダムロッシュ『世界文学とは何か』(共訳、国書刊行会)がある。
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関連書
※シリーズ「東欧の想像力』各巻
奥彩子『境界の作家 ダニロ・キシュ』