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 1983年、松籟社は「シュティフター作品集」の刊行を開始しました。
 それから23年、新シリーズ「シュティフター・コレクション」が始まります。第一弾は、彼の代表的な短篇集『石さまざま』全訳版です。



『石さまざま』全2巻
(シュティフター・コレクション1・2)

アーダルベルト・シュティフター 著

高木久雄、林昭、田口義弘、松岡幸司、青木三陽 訳



この本の内容


 『石さまざま』には、二つの短い文章(「序文」「はじめに」)と、6つの短編小説が載っています。短編小説にはそれぞれ、「花崗岩」とか「水晶」といった、石・鉱物の名前がつけられています。






 上巻には、「序文」「はじめに」のほか、短篇「花崗岩」「石灰石」「電気石」を収録しています。

 「序文」は、作家自身の芸術的信仰告白ともいうべきもの。ひとは自然に対するとき、稲妻や嵐、火山の爆発といった強烈な出来事の中に、自然の偉大さというものを見るけれども、私はそうは思わない、大気の流れや水のせせらぎ、穀物の成長といった、一見ささいな、つまらなく見えるもののなかにこそ、自然全体を統べる偉大な法則が宿っているのだ──シュティフターの創作原理ともいえる、重要な文章です。

 「はじめに」は、幼いころの鉱石蒐集の想い出を語っています。ほかの人には、何の変哲もない「石ころ」に見えるものが、自分にとっては不思議でしょうがないものに見えた、という経験を語りながら、それぞれ石の名前がつけられた『石さまざま』、いわば石ころのコレクションを、子どものころの私のようにじっくりとみつめてほしい、と願っているように思われます。

 ボヘミアの森の風物を背景に、故郷での想い出を紡いでいるのが「花崗岩」。語り手にとって今も忘れられない、子ども時代のある失敗のこと。ショックに打ちのめされているときに、祖父がやさしく声をかけてくれたこと。一緒に山道を歩きながら、祖父がしてくれたボヘミア地方の昔の出来事──子ども時代の心の痛み、それがいつか癒されていく不思議さ、多くのひとが共感するお話しではないでしょうか。

 「石灰石」は、不毛の地に暮らす貧しい司祭の、ひとに知られぬ美しさを描いたもの。司祭が極端に質素な生活を続けているのには、ある理由があった、その理由が明らかになるのは、彼が息を引き取ってからなのですが──

 姦通を犯してしまった罪に苛まれ、家を離れた妻。夫もまた幼い子どもを連れ、行方しれずとなります。数年後、彼らのその後が明らかに。姦通とそれへの呪詛という、ある意味で人間のまがまがしい情念に巻きこまれた子どもが、愛ある女性によって救われるお話、それが「電気石」です。






 下巻には、「水晶」「白雲母」「石乳」の3つの短篇を収録。

 シュティフターの代表的な短篇「水晶」。山村で暮らす幼い兄妹が、山の向こうの祖父母に会いに行き、しかし帰り道、大雪で道に迷ってしまいます。野宿を余儀なくされる子どもたち、しかしそんな幼い子どもたちを、自然の驚異が護ります。

 自然の化身とも思えるとび色の少女と、3人のきょうだい、父親・母親・祖母との関わりを描いたのが「白雲母」。山の中で出会ったとび色の少女と、3人の子どもたちは仲良しになります。山の中で子どもたちが雹(ひょう)に遭ったとき、家が火事になったとき、子どもたちはとび色の少女によって命を救われます。とび色の少女も、すこしずつ家族にとけこみ、お互いにあたたかい関係を築いていきます。しかし少女はいつしか、自然に帰っていくように、姿を消してしまうのです。

 ナポレオン戦争を背景に、戦争と子どもとがコントラストをなしているのが「石乳」。ある城に暮らす、奇妙な人間関係で結ばれた家族。平穏に暮らしていた彼らのもとにも、戦火は及びます。いつ起こるかもしれない戦闘に備え、城の中にこもって夜を過ごす家族。そこに敵方のスパイが現れて──


 なお解説として、上巻に松岡幸司さんによる「シュティフター─その生涯と作品」を、下巻に林昭さんによる「『石さまざま』について」を収録しています。


この本のデータ

 定価・ページ数・判型は、上巻、下巻とも同じです。


  • 書名:石さまざま(上)・(下)
  • 著者:アーダルベルト・シュティフター
  • 訳者:上巻─高木久雄、林昭、田口義弘、松岡幸司、青木三陽
  • 訳者:下巻─田口義弘、松岡幸司、青木三陽
  • 判型:四六判(127×188mm)
  • 製本:上製(ハードカバー)
  • 頁数:208頁
  • 価格:1500円+税(税込み1575円)
  • ISBN:上巻─4-87984-243-5 C0397/下巻─4-87984-244-3 C0397

著者シュティフターについて

 19世紀オーストリアの作家。自然描写の比類ない美しさで知られます。哲学者ニーチェに「繰り返して読むに値する、ドイツ文学の宝である」との評あり。


 『石さまざま』上巻に、訳者・松岡幸司さんによる解説「シュティフター─その生涯と作品」を掲載しています。その内容をかいつまんでご紹介すると──


  アーダルベルト・シュティフターは、1805年10月23日に、現在のチェコ南部、モルダウ川上流の小さな村オーベルプラーンに生まれました。1818年、上部オーストリアのクレムスミュンスター修道院のギムナジウムに進学、のちウィーン大学に進みます。法学部に身を置きつつも、法学よりも自然科学に傾倒し、またギムナジウムで学んだ文学や絵画の世界にものめりこんでいきます。


 1830年代後半から、シュティフターは自分の風景画を展覧会などに出展しはじめ、少しずつ画家としての道が軌道に乗り始めてきました。いっぽう文筆活動では、1840年に処女作「コンドル」を発表します。雑誌に続々と短編を発表し、それらを改稿してまとめた『習作集』は、1844年に第1巻が出、各巻2・3作ずつシリーズとなり、1850年までに6巻が出版されることになります。


 1848年、彼の人生の最大の転機とも言える三月革命が起こります。当初、シュティフターは革命に共感、好意的でしたが、革命があとに残した惨状をみて、次第に失望を感じだします。革命がのこしたのは、破壊、流血といった混乱や、自由や人間性の喪失であった――その苦い思いから彼は、社会の変革は、一時の大きな出来事によってなされるのではなく、幼い頃からの人間形成において用意されなければならない、と感じるようになります。この認識からシュティフターは、教育活動に従事し、未来の社会を担っていく子供たちへの思いが強まります。それが結実したのが、1853年に短編集として出版された『石さまざま』なのです。


 『石さまざま』を出版した後も、画業や著作活動はおとろえず、長編『晩夏』のほか数々の短篇を発表しますが、そのころより肝臓病の徴候が見られだします。1865年から67年にかけて、計三巻の大作『ヴィティコー』を発表しますが、1867年末には病状は絶望的なものとなり、1868年1月28日、永眠します。


 シュティフターの文学作品の特徴として一番に挙げられるのは、その緻密な自然・地誌描写。作家であると同時に画家であったことから、「画家の視点」ということが頻繁に指摘されますが、絵画の世界でなしえなかった事を文字の世界でなしとげた、と言うべきでしょう。一枚のキャンバスに切り取られる風景ではなく、360度を様々な角度から俯瞰し、視点から対象までの距離の遠近を自由に駆使し、そこに地誌として時間的な奥行きをも付け加える彼の描写は、精密という言葉では表しきれない深み(厚み)を持っているといえます。


 さて、日本におけるシュティフター受容は長く、大正末期に『ブリギッタ』が翻訳出版されたという記録があります。第二次世界大戦終結までに、すでに7編の翻訳が出ており、戦後は1948年頃から数々の翻訳が出版され、研究者だけではなく一般読者にも広く好まれていたようです。現在も愛読者が多く、なかには、その思いを素敵なウェブサイトにまとめておられる方もいらっしゃいます。世界の果ての図書館内の「シュティフターの紙ばさみ」をぜひ、ご覧になってください。



この本をお求めになるには

 『石さまざま』は、大型書店を中心に、全国の書店でお求めになれます。

 上下巻の2巻本ですが、上巻のみ、あるいは下巻のみでもお買い求めいただけます。

 e-mailでの直接注文も承っています。件名を「書籍注文」とし、メールをお送りください。アドレスはbooks@shoraisha.comです。折り返し、確認のメールをさしあげます。なお、2006年7月末まで、送料小社負担とさせていただきます(1冊のみでも)。



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